書評:告発本「私たちは売りたくない」について。
レプリコンワクチンを販売する明治製菓ファルマの社員による内部告発本という事で反ワク界隈で話題になっているこの本だが、疑ぐり深い初期の頃からの「反ワク陰謀論者」たちはこの本を疑いの目で見ている。それは私も同じだが、どこがどう怪しいのかという分析が私と「反ワク陰謀論者」たちとでは全く違うので、それについて書いていきたい。
まず第一にこの本は面白かった。これまで読んできた反ワク本の多くは内容がまとまっておらず科学的な根拠ある話とトンデモの境界線も曖昧で、なおかつ専門知識の解説も不十分なので極めて読みにくい本が多かった。その一方でこの本は実によくまとまっていて飛躍も少なく、かつデータや専門知識もわかりやすく解説してあり、mRNAワクチンの危険性とレプリコンワクチンに対する懸念が非常に明確に伝わってくる。間違いなく私がこれまで読んだ反ワク本の中ではナンバー1だし、アマゾンの書評欄には5つ星をつけても良いレベルだ。まさに反ワクのバイブルと言って良い!。。とベタ褒めから始まったが、ちょっと待てよと違和感を感じて欲しい。そもそもなぜ匿名の内部告発本がそんなに良く纏まっているのか?以下にこの本に感じた違和感を列挙していきたい。
●反ワク知識の教科書的構成であり、内部告発の生々しさが感じられない。
内部告発という事で「どこかの省庁から圧力がかかった」とか「隠蔽するように買収された」みたいな、そういう生々しい話を期待していたのだが、そのような話は無い。基礎的な業界における内部事情というか業界あるあるみたいな話は書かれているが、あくまでも一般的な内容であり、特定の人物や企業、団体による不正が暴露されている等の生々しさは殆ど無い。その一方で前述したようにmRNAワクチンの危険性に対する知識については非常にわかりやすく解説されている。これは本当に内部告発本なのかという疑問を抱いたのは私だけでは無いはずだ。
●結局、ヤツらの本だろ、コレ!笑
ヤツらとはコロナ禍が終わったあたりから「パンデミック条約反対」とか「レプリコンワクチン反対」とかで大規模なデモを繰り返しているあの連中である。具体的には「WCHジャパン」「mRNAワクチンに反対する国民連合」「参政党」とかその界隈(以下WCH参政党界隈と呼ぶ)の事あり、この勢力は殆ど同じ人脈が看板を付け替えて、手を変え品を変えて(団体名を変えて)いろんな層を取り込もうとしていると見られる。それだけならまだしも、幸福の科学やサンクチュアリ教会などのカルト宗教やマルチ商法の参加、原口一博や林千勝などの親中国親ロシア勢など、非常に問題の多い界隈であり、極め付けには9月28日の有明デモにおいて反社による動員があった事が報道されており、まさにザ・反ワクの闇みたいな連中だ。
前置きが長くなったが、この本「私たちは売りたくない」を読んでいると、その界隈の人脈や、その界隈で話題になったトピックが随所にさりげなく散りばめられている。例えばp195〜p196にかけてはズバリ彼等の池袋と日比谷でのデモについての好意的な記述があり「デモの参加者はどこかの組織から動員されたわけでは無く生まれて初めてデモに参加して街を歩いた人が多かったようです」等と白々しい事が書いてある。なんで明治製菓ファルマの社員にそんな事がわかるのか。怪しい笑。他にもCBCテレビはもちろん、繋ぐ会や小林製薬の紅麹事件、藤江成光など、著者は反ワクSNS界隈の住人では?と思えるほど反ワク界隈におなじみのアイテムがそこかしこに散りばめられている。読めば読むほど製薬企業に勤務するワクチン営業社員による内部告発というよりは「毎日のようにSNSを見ている反ワクさん」が書いた本に思えて仕方が無い。もちろん単なる「ネット反ワク」よりは全然知識も筆力もある人物が書いた事は確かだが。
●この本の出版社「方丈社」とは?
方丈社のサイトで出版している本の一覧を見ると一目両全だが、案の定、WCH参政党界隈を中心とした反ワク陰謀論者の著書を数多く扱っている。井上正康、松田学、武田邦彦、山中泉、我那覇真子などだ。しかもご丁寧にパンデミック条約反対デモの紹介記事もある。そりゃヨイショするわけだ。ある意味自作自演じゃ無いか。ただもちろんその事(反ワク本が多い事)自体が問題なのでは無く、反ワクの中でも特定の勢力(WCH参政党界隈)の本だけを扱っている事に大きな問題(意味)がある。その勢力(WCH参政党界隈)とはつまり簡単に言うとDS陰謀論者の事であり、要約すると『この世界はアメリカ民主党を中心とするグローバリストのディープステート=DSが牛耳っており、ワクチンは彼等の人口削減の陰謀で、トランプとプーチンはそれに抗う反グローバリストの英雄である』と言う世界観を共有する陰謀論者の事だ。ちなみにこの勢力はプーチンを英雄視している事からもわかるように親ロシア派であり、その事にこの本の意味を読み解く大きなヒントが有ると私は見ている。彼等は同時に熱烈なトランプ支持者でも有るのだが、トランプや彼等WCH参政党界隈の掲げる「反グローバリズム」と言う政治思想は実はロシアにとって都合が良い。なぜなら反グローバリズム主義者は西側諸国内でEUやNATOからの脱退やその解体を唱えて西側諸国を分断&弱体化してくれるからだ。だから実際、トランプをはじめ、欧米の反グローバリズム政治勢力とロシアは資金面を含めた繋がりがあり、その事は一般にも報道されている。その日本版がWCH参政党界隈であると言う事だ。この構図が理解できないとこの本の意味は理解できないだろう。
●mRNAワクチンだけを特別に叩く意味は?
この本では基本的にレプリコンワクチンを含めたmRNAワクチンだけを特別に危険視しており、その他のワクチンについては基本的に肯定的に書いてある。レプリコンだけを批判しているのでは無く(同僚を死に追いやった)mRNAワクチン全体を批判しており、そのmRNAと同等もしくはそれ以上に危険だからと言うロジックでレプリコンを批判しているのだ。しかし、それと引き換えにそれ以外の不活化ワクチンや生ワクチンについては肯定的に書いてあるので、この点を捕まえて反ワク陰謀論者たちは「mRNAワクチン以外は良いと思わせるための誘導だ!」などと憤慨しているが、私はそんな浅い見方はしない。だいたいそもそもワクチン業界自体がこれからはmRNAだ!てなってる時にそのmRNAを大々的に叩いて他のワクチンを正当化する事に何のメリットが有るのか?自爆行為でしか無いだろう。むしろ製薬企業で働くインサイダーとしてはワクチン全般を肯定的に捉えているのは当然であり、この点にはむしろ内部告発本としての信ぴょう性を感じたほどだ。だが最初から推論しているようにこの本は純粋な内部告発本では無く、何か他の目的を持って書かれたのかもしれない。だとしたらmRNAワクチンだけを特別に叩く意味はどこにあるのか。実はその事にこの本が出版された意図があると私は見ているのだが、それについてここから説明していきたい。
そもそもmRNA技術はワクチンのためだけに開発されたものでは無く、新しい医療技術として、特に再生医療の分野において期待されていたものだ。mRNAについて極簡単に説明すると、生物の遺伝情報が含まれた(細胞の中にある)DNAはmRNAという言わば中間形態を経て、その遺伝情報どおりにタンパク質を組み立てて身体の各部位を作っていく。ちなみにmRNAのmとはメッセンジャーの略でDNAの情報を伝達するという意味が込められている。
このようなmRNAであるからこそ、その用途はむしろ再生医療において本領を発揮すると言っていい。例えば変形性膝関節症(いわゆる膝痛)で磨り減った膝の軟骨を再生するなどが典型的だが、もっと技術が発展すれば外傷によって欠損した組織の再生など、夢のような応用も可能になるかもしれない。
ご存知の通り、この技術をワクチンに応用し、コロナウイルスのスパイクタンパク(ウイルス周辺にあるトゲトゲのことで細胞に吸着して侵入するための部位)だけを作るmRNAを注射し、人間の体内、正確には細胞内でスパイクタンパクを量産するというのがmRNAワクチンのメカニズムだ。人体内でスパイクタンパクが大量生産されることで人間の免疫機能が働き、コロナウイルスに対する抗体(スパイクタンパクにくっついてウイルスが細胞に吸着&侵入するのを防ぐ)が作られ、免疫を獲得するという流れである。ちなみにmRNAは非常に不安定なので、注射してもスパイクタンパクを作る前に分解されてしまうというのが今までの難点であり、なかなか実用化されなかったが、近年、mRNAを脂質ナノ粒子で包む事によって安定する事がわかり、mRNAワクチンが実用化されたのだが皮肉な事にこの脂質ナノ粒子もまた体にとって有害となりうることが指摘されている。
そして、このmRNAが体内で増殖するので、少量のワクチンで長持ちするというのがレプリコンワクチンの触れ込みなのだが、つまりレプリコンワクチンとはmRNAワクチンの発展型という事になる。いずれにしても、このような出来立てホヤホヤの最新技術をいきなりワクチンに応用したために新型コロナワクチンは多くの被害者を生み出したとも言えるが、その一方でこの技術は最新医療技術なので国際的な開発競争の対象にもなっている。